任意売却、不動産競売と仮差押え

1 任意売却について

 住宅ローンのご返済が困難になった場合、任意売却又は法的措置(競売)により自宅を手放さなければならないことがでてきます。

 その中でも、任意売却を利用する方法があります。なぜかと申しますと、

(1) 通常の不動産取引として売買されるため、一般的に競売より高値で売却することができる可能性があるからです。

(2) 裁判所による不動産競売の手続と比べると、一般不動産の売却と同様、自宅の引渡時期について、買主との調整ができるからです。

 しかしながら、任意売却が円滑に進むためには、売却を行ってもらう不動産業者について、

(1) 適切な販売活動を行うことができる仲介業者の選定が必要となります。

(2) 自宅を売却するのですから、所有者の全面的な協力が必要不可欠となります。ご自身の大切な資産である住宅の売却を任せる仲介業者ですので、慎重に選ぶことは当然のことです。

 

仮差押命令を掛けたマンションには独立行政法人住宅金融支援機構等(以下「機構」という。)の抵当権が設定されていました。

 仮差押債権者である依頼者は、プレッシャーを掛ける目的でとりあえずそのマンションに仮差押を掛けてはみたものの、機構の抵当権が設定されており、実際の取り分が乏しいと判断し、又訴訟手続きという費用対効果の観点から、その後の本案訴訟や強制執行を進めることを諦め、それでも、あえて仮差押を取り下げることもしないで、結果、放置していました。

 他方の債務者側からすれば、自己のマンションに仮差押えがついていれば不利益となることから、債権者が仮差押えを掛けたまま放置している場合には、「起訴命令」、「保全取消し」という方法が残されています。しかしながら、新たな火種となって債権者が訴訟を起こしてくるという事態が想定されるわけです。ということから、債務者も何もしないで放置していました。

 

3 抵当権者である機構は、仮差押えに遅れて、担保不動産競売開始の差押を掛けてきました。(続く⇒