差押債権取立訴訟、供託金、仮差押え

<債権差押え命令、差押え債権取立訴訟、債権者不確知供託、債権仮差押命令>

大家Aが所有していたアパート相続登記により、子供らB、Cの共有となっていたところ、銀行ローンの返済が滞り、任意競売申立てにより競売で所有権を取得した株式会社甲は、大家A(相続によりB、C)に対する貸付債権の確定した勝訴判決(債務名義)に基づき、アパートに居住している借家人X、Yに対し、大家A(相続によりB、C)に対する賃料債権の平成27年8月分、9月分、10月分、11月分を差し押さえてきました。

借家人Xは、大家Aとの定期賃貸借契約の締結により、平成27年4月から9月分までの賃料を前納しており、又平成10月分と11月分の賃料は、借家人と一緒に債権者不確知の供託をしております。(実際、誰に支払って良いのか、分からなかったので、平成10月分と11月分は債権者不確知の供託をしました。)

そのような事情があったため、借家人X、Y差押えが来ても支払わないでいたところ差押債権取立訴訟が提起されました。

5月29日、借家人Yは、第一期日に裁判所に出頭し、供託したことを言わずに、「平成27年8月分、9月分、10月分、11月分の賃料とその遅延損害金を支払います」と、法廷でしゃべってしまいました。裁判長が何回も「本当に認めるんですね」と念を押されたとのことです。すると、判決の日が言い渡され、6月12日となりました。判決の日には来なくていいとも言われました。YはXの母親なのです。

借家人Xは、裁判長が平成27年8月分、9月分、10月分、11月分の賃料とその遅延損害金の支払いを認めますか?」と確認を求めてきたときに、借家人Xは、口ごもりながら、『賃料はもう払ってます!』と言ったそうです。すると、裁判長が裁判長席から降りてきて(通常はこのようなことはないが)、「本当に払っているんですね」と、再確認を求めてきたので、『定期賃貸借契約の前払いで6か月分支払ってます。それに、10月、11月分は供託しています!』と、やっとの思いでしゃべったとのことです。

すると、書記官が口頭弁論終了後、「専門家に相談して、証拠があるなら、きちんと対応した方がいいですよ」と、アドバイスをしてくれたそうです。

そこで、いろいろ、相談できるところを探し回って、裁判もベテランで報酬の一番安い当事務所を訪れたわけですが、問題点がかなり、ありました。

まず、平成10月分と11月分の賃料について、借家人X、Yは供託をしておりますが、その供託金取戻請求について、株式会社甲が仮差押えをかけているということです。

借家人Yについて、弁論が終結しており、相談に見えた日の翌日が判決言渡しとあっては、10月、11月分を供託していることを主張できないし、時期に遅れた攻撃防御方法となるため、控訴を視野に入れなさいと言うしかなかった。借家人Yは敗訴判決により、賃料全額を支払うこととなると、損害金の金額が大きくなるため、やはり、10月、11月分は、供託金から取ってもらう方がいいとなった。

相手の株式会社甲は、借家人Yに対する勝訴判決の債務名義をもって、再度、供託金の本差押えをしなければならないため、法廷から出てきたときに、捨てぜりふのように『なんで、供託なんかしたんだよー』と言ったとのことである。

相手の株式会社甲は、勝訴判決により、借家人Yが供託した10月、11月分を含んだ賃料全額を請求するのであれば、供託金の仮差押えは取り下げてもらうこととなるが、それを主張する場がないところから、借家人Yは勝訴判決書に記載された金額のうち、支払うべき賃料のみ(10月、11月分を除いた)を支払うことで頑張るしかなさそうである。

一方、借家人Xは、

第1 請求の趣旨に対する答弁

 1 原告の被告Xに対する請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする

第2 請求の原因に対する答弁

   1 請求原因1項中、賃貸借契約締結の事実は否認する。被告Xと大家Aとの契約は定期賃貸借契約であり、被告Xは、すでに、平成27年4月から9月分の賃料を同年4月7日に支払い済みである。

 2 請求原因2項中、平成27年10月から11月分の賃料の未払いについては否認ないし争う。同賃料については、横浜地方法務局平成27年度金第1000号、供託金24万円として供託済みである。

第3 被告Xの主張

 1 被告Xと大家Aの平成27年4月から9月分の定期賃貸借契約の賃料は、金78万円である。

 2 被告Xは、大家Aに対して、平成27年4月7日金78万円を支払った。(乙第1号証、同号証の2)

 3 被告Xは、平成27年10月から11月分の賃料金24万円(横浜地方法務局平成27年度金第1000号)は供託により支払済みである。(乙第2号証)

 4 よって、原告の請求はいずれも棄却されるべきである。

 という答弁書を提出すれば、借家人Xの勝訴判決は間違いないであろう。その場合、相手方甲は供託金をどのように払戻請求するのであろうか。もともとの大家Xに対する債務名義をもって、本差押えをかけて取り立てるのであろうか。