家督相続

 戸主Bが旧法中の昭和20年7月に死亡しているが、法定・指定及び選定の家督相続人もないまま新法の施行に至っています。(同ケース=昭和19年8月28日、戸主が戦死し、唯一人の弟が残されたが、家督相続の選定をしないまま過ぎた。)

 本件ではB死亡当時Aの母親が健在だったということから、Aの母が家族中から相続人を選定すべきものであったと考えられます。この場合、今日の未処理の遺産処理については、相続の開始が旧法における家督相続であっても、旧法中の相続開始時に遡って新法の遺産相続の規定が適用されます(民法附則第25条2項本文)。

 したがって、本件Bを被相続人として同人死亡後の昭和20年7月に生存していた相続人となる者は、妻A(相続分2分の1)、Bの直系尊属父母、相続分2分の1)(民889条1項第1、890条、改正前900条2号)。この場合は、旧民法の親族関係で新法を適用します。

 ただし、昭和22年12月31日までに選定されていたが、戸籍上の届出をしていないという場合は、現在でもその届出は認められ、市区町村長は監督法務局の許可を得て、職権で家督相続による新戸籍の編製をすることができます(昭和26年1月26日民事甲第50号回答)

 しかしながら、昭和32年法務省令第27号による戸籍改製後は、家督相続による戸籍編製は省略されることとなりました(昭和33年5月29日民事甲第1070号通達)。

 次のような戸籍の記載をお見かけする場合があるかと思います。

『○某家督相続平成  年 月 日許可  月  日記載戸籍改製後につき家督相続による戸籍の編製省略㊞