相続 Q&A


Q1 養子と相続について

A 養子縁組は、基本的には養親が年長であれば、市区町村に届出をすれば実子と同じように相続人になり得ます。

  ただし、戸籍の届出と相続税の考え方と違いますから、相続税対策として養子縁組をなさる場合は、気をつけて

   ください。


Q2 戸籍の本籍地と住所とは違うのですか。

  戸籍の本籍地と住所とは違います

   戸籍は人の身分関係(出生・婚姻・養子縁組・氏名変更・死亡等)が記載される公的な書類ですが、住所は、住所

 の移転等が記載される公的書類です。住所には、本籍地が記載されない住民票が発行されますので、相続関係に

 は、必ず本籍地記載の住民票を取得しましょう。 


Q3 戸籍の改製原戸籍と除籍の違いは?

 改製原戸籍とは、原戸籍(はらこせき)とも言い、戸籍の改製によって、従前の戸籍が削除され新たな戸籍が編

 製された場合のその除かれた従前の戸籍をいいます。除籍は、①一戸籍内の各員が順次削除されて、その全員が除

 かれた場合 ②管外へ転籍の場合 ③旧法においては、家督相続があったときにも従前の戸籍は除籍となりまし

 た。


 Q4 戸籍の附票と住民票の違いは? 

 住民票は、住民基本台帳法に基づいて、個人を単位とする世帯ごとに編製されます。戸籍の附票は、「市区町村

 長は、その市区町村の区域内に本籍を有する者につき、その戸籍を単位として、戸籍の附票を作成しなければなら

 ない。」という定めによって、職権で記載されるものです。したがって、戸籍の附票は本籍地でしか取得できませ

 ん。


Q5 戸籍の見方で気をつけることは何ですか?

 特に、相続人を特定する場合に、除籍、改製原戸籍とかの場合、現行戸籍と違って、事項欄と身分事項欄が一緒

  の箇所に記載されており、認知事項、養子縁組事項を見落としがちであります。親、養親の事項欄には、認知した当

  時の除籍簿、改製原戸籍にのみ、縁組事項が記載される仕組みになっておりますから、転籍、新しい戸籍を作ったと

  きなどには、移記されませんので、注意が必要となります。


Q6 台湾の夫と結婚をしている日本人妻ですが、婚姻届を出していません。今般、夫が死亡しましたが、日本人妻は相続することができるでしょうか。子どもはいませんが、夫の兄弟が3人います。

 婚姻届を提出していない(民法第890条の配偶者でない=法律上の配偶者でない)内縁の妻は、遺言書が作成さ

 れていない限り、残念ながら、相続権はありません


Q7 Q6の場合、永年、共同で事業をして形成した夫名義のA銀行の預金でも内縁の妻には相続権が認められませんか?

 あなたには相続権がないので、夫名義の遺産を全て取得できるということにはなりませんが、夫名義のA銀行の

   預金が、あなたとあなたの夫とが共同で事業を営んで得た財産ということであれば、あなたとあなたの夫の共有財

   産ということになる可能性があります。その証明により、民法第250条の規定により2分の1の共有持分権が認

 められる可能性があります。夫の兄弟と話し合いが可能な場合には、話し合いをして、具体的な分割案の調整手続

 きをする必要があります。

 

Q8 平成20年に父甲の遺産について、相続人である母乙、子A、B、C間で遺産分割協議が行われ、不動産については母乙が全てを相続することに決定しました。しかし、遺産分割協議書は原本ではなく、コピーしかありません。 登記をしないうちに、母乙が平成26年に死亡しました。母乙が単独で相続した不動産について、子A、B、C間で遺産分割協議を行なった結果、子Aが相続することになりました。 どのような登記をしたらよいのでしょうか?

 まず、平成20年父甲死亡時に行われた有効な遺産分割協議書(例えば、相続の申告をしたが、相続登記はしなかった場合、その遺産分割協議書のコピーの場合)であっても、登記に使用できないケースも考えられます。

 しかしながら、そのコピーが残っている場合、相続の確定申告をしていることが考えられることから、その分割協議の結果をないがしろにすることはできません。

 登記では使用できない遺産分割協議書をどのような法的効果を持たせて、登記申請ができるかですが、平成20年の遺産分割協議書を追認する形で現在の相続人が証明する方法もあります。

 そこで、登記手続き上、有効になった平成20年の遺産分割協議書と今般の平成26年の協議書で1件の登記申請(数次相続)をすれば、登記免許税が軽減されることは自明の理です。

 ただ、注意を要する落とし穴がある場合があります。それは、妻乙が相続すれば、相続税が発生しなかったと考えられるところ、父甲の相続登記を今般の平成26年の遺産分割協議書と抱き合わせで最終相続人Aとして、1件の登記申請をした場合、税務署が相続税をどのように掛けてくるか、税理士に相談された方がよいと思われます。

 登録免許税を節約したところ、相続税の方が高くなってしまったのでは本末転倒です。亡乙名義に一度相続登記を入れて、相続税を回避するという手法を取る場合があります。

 それでも、1件の登記申請で課税されないようであれば、遺産分割協議書は、平成20年の内容を現在の相続人で証明し、今般の平成26年の遺産分割協議(協議者は同一人)を双方添付して、数次相続の形を取る方法が考えられます。

 相続登記は、ベテランの当事務所にお越しいただきますと、懇切丁寧にご説明申し上げます

 

Q9 相談者Bの父甲は会社員でした。甲は妻乙と死別後、甲が敷金を払って契約を行い、甲の長男Bが連帯保証をしました。賃貸マンションで内妻丙と生活を始めましたが、出勤途上、歩行者用青信号に従って横断歩道を歩行中に車にはねられて死亡しました。甲の財産は、現金、預貯金、株式。甲の子はAとBです。 生命保険は、保険金受取人が丙に指定されていました。 会社から甲の死亡退職金が出るようです。家主からBに家賃の請求がありましたが、払う必要がありますか。

A 連帯保証人Bへの家賃の請求につき、賃貸契約での連帯保証人とは、部屋を借りている人がお金を払わない時に、その請求を連帯保証人にすることが出来る仕組みです。

 よって、甲が賃料を支払うことができない場合は、連帯保証人Bに請求ができるのです。したがって、Bは払う必要があります。連帯保証人は支払いを拒否したくても、拒否することはできません。

Q10  Q9の場合、相続人は賃貸借契約を解除して丙を退去させられますか?

A (居住用建物の賃貸借の承継) 借地借家法第36条では、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに   死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。との規定があります。

 本件では、被相続人Xには、内縁の妻Zがいますが、相続人ABもいますので、本条を見る限り、相続人からの明渡請求につき、内縁の妻Zは退去しなければならないのかという疑問を生じます。

 判例の多くは賃借権の相続性を承認しながら、相続権のない同居家族の居住を保護する法的構成に努力を払っています。 従って、内縁の妻は、被相続人と同居をしていたという事情を考慮して、依然として居住権の存続を認められるべきあり、相続人からの明渡請求に対して、権利の濫用として法律上認められず、拒否できます。

Q11  Q9の場合、死亡退職金は一般的に誰に支払われるのでしょうか。

A 在職中に死亡した場合の退職金の受給権については、相続財産なのか、遺族固有の権利なのか、法的性格について大きく2つの見解に分かれます。すなわち、相続財産であれば、民法所定のとおり、基本的には相続人が法定相続分で分割取得することとなり、遺族固有の権利であれば、相続とはかかわりなく、特定の遺族が受給することとなり、他の相続人と分割する必要はありません。 死亡退職金の受給権者の範囲・順位等について法令、労働協約、就業規則等で定められていればそれに従って第1順位の者に全額支給すればよいのですが、これらの定めがない場合には、死亡退職金受給権は、相続財産として、相続人が法定相続分で分割取得しますので、法定相続分に応じて支払うことで対応すべきでしょう。

 生命保険は、保険金受取人が丙に指定されていますが、生命保険金の受取人が特定人に指定されているという場合には、その生命保険金が受取人の固有財産となり、相続財産(遺産)に含まれないことになります。

 ただし、近時の最高裁で「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となる」すなわち遺産分割において考慮されるという判断がなされました(最高裁平成16年10月29日決定)。

Q12 墳墓地の登記について、教えてください。  

A 墓地(墳墓地)の相続について

 現代のお墓の形式には、永代使用の霊園等が存在するため、また、お骨はお寺で一括してに納骨・合葬されるようになったため、更には、墓地は固定資産税が課せられていないことなどから、土地・建物の相続登記をする際に往々にして、相続登記が申請されないで相続登記の遺漏となるケースが多い。

 また、墓地も所有権の登記をしなければならないということが意外にも知られてないことから、相続登記等の承継の登記手続をしなければならないという概念が欠落している場合が多い。

 このような現代においても、なおかつ、土地登記簿の表題部の地目に墓地(墳墓地)として、表題部のみが祖祖父母の名前のみの記載があることがあります。

 この先祖代々からの相続登記等の承継の登記がされていない墓地の登記申請の依頼があった場合、苦労することが多いのは、戸籍の取寄せ、調査だけでも、400人にも上り、関係書類が膨大な量となることが、過去の取り扱った事件の中にはありました。依頼者の方でも登記申請を断念し挫折をされるなど、相変わらず、墓地の相続登記等の承継登記がなされないままの土地(墓地)が存在しているのです。そうこうしているうち、道路拡張等により、その土地(墓地)が官公庁の買収の対象土地地となり、嘱託登記に委ねられるまで放置状態が続いているというケースもあります。

 私たち専門家でもなかなか手を出したがらない非効率的な仕事でありますが、当事務所は、依頼者の先祖代々の名義を何とか変更してほしいという願いを十分に叶えてあげられる実務経験豊かなベテラン司法書士です。

 ところで、墓地の相続等による所有権移転登記手続には、「祭祀物承継」と「相続」の二つの承継が考えられます。

 (1)他の不動産と一緒に相続を原因として相続登記をする方法です。⇒この登記の際に『墓地』の相続登記を遺漏してしまうことが多いので、注意を要します。

 (2)民法第897条による承継を原因として登記を申請する方法です。

 原則として、墓地は祭祀財産であることから、「民法第897条による承継」を登記原因として所有権移転登記申請をすべきであるという見解があります。

 しかしながら、他人が墓地として使用している土地を所有している当該墓地の所有者にとっては、当該墓地は、自己の祭祀財産ではないことから、その所有者が死亡した場合、墓地は一般財産と同様に相続の対象(相続財産)となります。

 登記手続において、自己の祭祀財産か否かを証明する必要はないので、墳墓地の相続よる所有権移転登記は受理されます(昭和35年5月19日民事甲第1130号民事局長回答)。

 実際には祭祀物承継による登記は非常に稀有な登記です。承継を証する書面の添付及び遺贈に準じた登記の申請をすることになります。相続との違いは、単独申請ではなく、「登記原因証明情報=承継を証する書面」が必要になるなどのほか、相続を証する書面の添付は不要ですが、共同申請となるため、遺言執行者が選任されていない場合は、登記権利者が承継者、登記義務者として、相続人全員が義務者となるため、手続きとしての難易度は相続の場合と同様となります。

《民法第897条》 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める


※ 民法897条の祭祀財産承継の登記申請形態について(登研723号)

 【要旨】 被相続人に属していた財産の承継の登記申請について、祭具、墳墓等の祭祀財産の承継が審判で定められている場合又は遺言で指定されている場合であっても、その登記手続は共同申請による。

 Q問 被相続人に属していた祭祀財産の民法897条の規定に基づく承継については、一般の相続による承継とは異なるものであるため、祭祀財産の承継者が審判で定められている場合又は遺言で指定されている場合であっても、その登記手続は、単独申請によるのではなく、承継する者が法定相続人であるか相続人以外の第三者であるかにかかわらず、遺贈の場合に準じ、祭祀に関する権利を承継する者を権利者、相続人全員又は遺言執行者を登記義務者とする共同申請によるものと考えますが、いかがでしょうか。

 A答 ご意見のとおりと考えます。